放逸にふける勿れ

しらねあおい1925年、イタリアのスカラ座で、オペラ『ラ・ボエーム』が上演されていたとき、二幕目が終わって小休止に入った間に、このオペラの指揮者が貧血で突然倒れるということがあった。
三幕目の幕が上がっても指揮者が出てこない。異様な空気が場内にみなぎり、さすが本場のエチケットを心得た聴衆もざわめきはじめた。
その時である。客席から一人の紳士がつかつかと指揮台に上がるや、タクトを振った。一瞬場内は水を打ったように静まりかえる。そのしじまの中に、すばらしい演奏が流れはじめた。
やがてオペラが終わり、聴衆はその紳士がかの有名な大指揮者・トスカニーニであると知らされて驚くとともに、感謝の気持ちが万雷の拍手となって、いつまでも鳴り止まなかったということである。
誰に頼まれるでもなく、自分の名声を得ようと意識するでもなく、何の報酬を求めるでもなく、ただ「そうせずにはいられない」ものがあって、この感動的な情景が展開し、万雷の拍手によって満堂の聴衆が一つの心につながったのである。思わず「人間万歳」と叫びたくなるような、美しい、人と人の織りなす光景である。
107歳の長寿を保って、亡くなる直前まで数多くの名作を遺(のこ)された彫刻家・平櫛田中(ひらぐしでんちゅう)は、「今やらねばいつできる。私がやらねば誰がやる」との名言も遺された。やはり先ほどのトスカニーニと同じで、やむにやまれぬ気持ちが偉業を遺したのである。

本年も早4ヶ月が過ぎた。「誰かがやる」では誰もやらないと同じである。
経文に、
「精進(はげみ)こそ不死の道
放逸(おこたり)こそは死の径(みち)なり
いそしみはげむ者は死することなく
放逸にふける者は生命(いのち)ありともすでに死せるにひとし」
とある。
精進することこそが人生の意味である。精進の反対が放逸である。放逸とは「怠(なま)けること、仏道をおろそかにすること」である。また「わがままで、しまりのないこと」である。
働くのでもない、遊ぶのでもない、ボサッとして、ブラブラとしているのも放逸である。こんな人間が一人でも職場にいると、職場の空気を壊してしまう。家庭にあっても同じで、人間の精気をマイナスにしてしまう。講中にあっては、活性を失わせてしまう獅子身中の虫である。
さわやかな5月の風に舞う鯉のぼりのように、一人一人が力強く広布の空へ羽ばたこう。
『上野殿後家尼御返事』に云く、
「法華経の法門をきくにつけて、なをなを信心をはげ(励)むをまこと(真)の道心者とは申すなり。」(御書337頁)


大乗山 持経寺住職  丸岡雄道・著『麻畝の性 巻頭言  第一聚』より(禁無断複製転載)
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