爛柯ということ

花菖蒲時の流れは早いものである。今年ももう後半期に入るわけである。
「時は金なり」とも「時は命なり」とも言われる。ただ客観的な時の流れの中で無為に過ごしては、あたかも金の無駄遣いであり、命を殺す殺生戒(せっしょうかい)とも言えようか。時は主観的に活かしてこそ未来を開拓し、歴史を作っていく価値あるものとなるのである。

昔、中国に王質という名の樵(きこり)がいた。ある日、斧(おの)を手にして山に入った。すると童子が山深くにあって碁を打っていた。王質は思わず時を忘れて盤面に展開に見とれるうち、気がつくと手にした斧の柄が腐ってしまっていた。里に帰ると誰一人旧知の人はいなかった。
浦島太郎のような話である。そんなにも時間が経(た)ってしまったという話であるが、この故事から、囲碁に耽(ふけ)って時の経つのを忘れることを「爛柯(らんか)」という。 「柯」は柄のことで、「爛」は腐るという意味である。この故事からか囲碁そのものを爛柯と呼ぶそうである。転じて、好きな物事に心を奪われ、時の経つのを忘れることを指すようになった。
いかにも桃源(とうげん)の境に遊ぶ中国ならではの「仙郷(せんきょう)の物語」という感じのする話であるが、人が物事に夢中になる様子をよく表している。
時の流れを「日が昇って、日が暮れて」という客観的時間の経過でとらえるのではなく、何と壮大な主観の中の時の刻みであろうか。この壮大さに魅せられてか、昔の日本人に爛柯の故事は好まれたらしい。
『古今集』にある紀友則(きのとものり)の歌、
「ふるさとは見しごともあらず斧の柄の  朽ちしところぞ恋しかりける」
も、爛柯の故事にかけて昔、筑紫で時の経つのを忘れて囲碁に耽った碁敵を懐かしんで、すっかり様子の変わってしまった都へ帰ってから送った歌だそうである。
『枕草子』では囲碁の故事から離れて、徒(いたずら)に無駄な時間がかかるという意味で使われているらしい。「天声人語」で読んだ話である。

さて、私どもの「爛柯」は何だろう。ある対象に集中し夢中になり、情熱を燃やす体験は、私どもにとってはただ偏(ひとえ)に「信行学の実践」である。
『持妙法華問答抄』に云く、
「昨日(きのう)が今日(きょう)になり、去年(こぞ)が今年となる事も、是(これ)期(ご)する処(ところ)の余命にはあらざるをや。」(御書298頁)


大乗山 持経寺住職  丸岡雄道・著『麻畝の性 巻頭言  第一聚』より(禁無断複製転載)
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