ネズミの王様

椿花昔々の大昔、ネズミの王様が何百匹もの家来ネズミを従えて森の中で幸福に暮らしていた。
そこへ一匹のヤマイヌがやってきて、このネズミをうまくだまして一匹残らず食べてやろうと考えた。ところが何百匹ものネズミを一匹一匹襲って捕まえていては厄介であると横着な考えを起こして、毎日一匹ずつのネズミを手に入れるうまい方法はないものかと、サル智慧ならぬイヌ智慧を働かせて考えついた。
それは、自分が聖人になりすます方法である。ヤマイヌは毎日、一本足で立ちながら口を開けて太陽に向かっていた。その姿を見たネズミの王様は、(このヤマイヌは、きっと偉い「聖人」に違いない)と思った。そしてヤマイヌに名前を尋ねたところ果たせるかな、ヤマイヌは「わしの名は聖人と申す」と言った。
「では、なぜ、あなたは一本足で立つのですか?」
「わしが四本足で立つと、大地はわしの重みを支えきれなくなるからじゃ」
「では、口を開けておられるわけは?」
「それは、風を食べるためじゃ。聖人は風しか食しないのだ」
「では、太陽に向かっておられるのは?」
「太陽を拝むためじゃ」
これですっかりネズミの王様はヤマイヌを信用し、毎日毎日大勢の家来を連れてヤマイヌ聖人を拝みにでかけた。ネズミの王様が先頭に立ってヤマイヌ聖人に拝謁(はいえつ)し、次に家来どもが順番に拝む。そして一列になってネズミは帰る。ところが、そのネズミの列の最後尾の一匹を、ヤマイヌはパクリと食べてしまうのである。列の最後の一匹だから誰も気がつかない。
しかしそのうちに、ネズミの数が減っていくことが分かってくる。(どうもあのヤマイヌが怪しい……)と、ネズミの王様はそれを確かめることにした。
次の日、ネズミの王様が列の最後尾についた。案の定、ヤマイヌはネズミの王様に手を伸ばしてきた。それをさっとかわして、ネズミの王様は言った。
「正体を現したな。このニセ聖人め!お前が聖人ぶるのは、いいことをするためではなく悪いことをするためだな。けしからん!」
ネズミの王様はヤマイヌめがけて飛びかかり、ヤマイヌののどを噛み切って殺してしまった。そしてネズミたちは、またもとのように平和に暮らすようになった。

これは、釈尊の本生譚(ほんじょうたん)に出てくる話である。宗教法人とか聖職者という名分に隠れて悪いことをする団体が、ようやく社会の糾弾を受けるようになってきた。私どもは、このヤマイヌのような、外面を菩薩に装った夜叉(やしゃ)のごとき者の奸計(かんけい=悪だくみ)を見破っていく智慧を常に磨くことこそ肝要である。

『就註法華経口伝』に云く、
「今日蓮等の類(たぐい)南無妙法蓮華経と唱へ奉る者は明鏡に万像を浮かぶるが如く知見するなり」(御書1776頁)


大乗山 持経寺住職  丸岡雄道・著『麻畝の性 巻頭言  第一聚』より(禁無断複製転載)
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