秋二題

秋たけなわ。そこで一句。
「長き夜ぞ  軒端(のきば)に萩(はぎ)のそよぎかな」
ちょうど今の季節の発句(ほっく)であるが、これ私の吟ではない。句の巧拙はおいて、この句、実は上から読んでも下から読んでも同じ言葉でできている。
回文といって、我が国にかなり古くからある言葉遊びのレパートリーの一つとして欠かせないものである。「竹やぶ焼けた」「たしかに貸した」「わたし負けましたわ」の類である。
回文は、上下どちらから読んでも完全に同じである方がいいに決まっているが、あまりルールが厳密では長い文や和歌、俳句の類は作れないので、若干の許容事項が認められている。
その第一は、濁音と清音は同じと見てよい。第二は、仮名づかいの相違を問わない。オとヲ、ムとンのごときである。
さて、この回文の傑作中の傑作は次の一首であろうと私は思っている。
「皆(みな)空(くう)の世界なり  地(ち)も水(みつ)も火(ひ)も
罪(つみ)も塵(ちり)無い  風(かぜ)の浮(う)く波(なみ)」
これは見事に地水火風空(ちすいかふうくう)の五大が一首の中に織り込まれての回文である。
諸法実相は、仏のはからいの上では、差別の中にもすべて一如一体である。そういう意味ではまさに本末究竟(ほんまつくきょう)して等しいのであって、これまた妙法五字の世界と見ることはできないか。
諸法の実相は即空即仮即中こそ詮である。

今、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)がいたる所で、地下のマグマがチョロチョロ地面に炎を這(は)わせたように咲いている。「地獄花」とも言うそうだが、言い得て妙である。
この花は球根で増えるそうであるが、その球根にはアルカロイド系の毒が含まれていると言われている。しかし、この毒は水にさらすと無毒になるそうで、これは最後の非常食だと言われている。
一般に植物が花を咲かせるのは、花を咲かせて蜜を出すことによって昆虫を招き寄せ、その昆虫に花粉を媒介してもらって子孫を増やす仕組みになっていると教わった。
にも拘(かか)わらずである。この曼珠沙華は美しい花を一杯咲かせる。もともと種子を作らず球根で増える植物だから、なにも花を咲かせて蜜蜂に花粉を媒介してもらう必要などないのである。
曼珠沙華は、自分は球根で増える植物だけど、蝶や蜜蜂のために蜜を出してプレゼントしてあげたいから、また道行く人に美しい花で心をなごませてあげたいから力一杯咲いているのだと思えないか。自分には一文の得にもならない無償の行為を、大自然はやってのけているのだ。
もの言わぬ花が、他者のために布施をしているのだ。
私ども人間は、いささか恥ずかしい。自分のことばかりしか考えていないのは、私ども人間だけではないだろうか。ひろさちや氏の「こころの歳時記」で読んだいい話である。
近頃、「人間主義の仏法」などと、聞こえはよいが訳の分からぬ言葉をよく耳にするが、大聖人の御法門はひとり人間にとどまらず、草木はおろか、法界のすべての成仏を期す広大無辺の仏法である。
『草木成仏口決』に云く、
「草にも木にも成る仏なり」(御書522頁)


大乗山 持経寺住職  丸岡雄道・著『麻畝の性 巻頭言  第一聚』より(禁無断複製転載)
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