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【これまでに掲載された巻頭言】
平成22年12月「行く年来る年」  平成22年11月「かくし味の人生」
平成22年10月「仏眼をかって時期をかんがへよ」  平成22年9月「彼岸に思うこと」
平成22年8月「お盆雑感」  平成22年7月「煩悩即菩提」  平成22年6月「初夏の風の中で」


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行く年来る年

今年もはや12月を迎える。
「月日は百代(はくたい)の過客(かかく)にして、行きかふ年もまた旅人なり」
『おくのほそ道』の冒頭の一節が、何故かこの季節の私の心に共鳴するのである。

一年の最終の月がこの月、師走(しわす)である。お寺の坊さん(法師/ほっし)がお経を誦(よ)むのに檀家をせわしく走り回るので、「師の走り月」という意味から生まれた言葉が師走であるという説が巷間(こうかん)定着?しているようであるが、一説には、一年の終わりで万事を為果(しは)つるから「シハツ月」で、それが転じて「師走月」となったとある。
私どもは年頭に当たって御宝前にこの一年の誓願を立てるが、果たして首尾よく「為果(しは)つ」ることができたであろうか。
慚愧(ざんき)の思いに責められる。凡夫(ぼんぷ)の悲しさ、雪山(せっせん)の寒苦鳥(かんくちょう)の鳴かぬ師走はなく、いつも極月を迎えて「大晦日(おおみそか)、13月が欲しくなり」の心境である。

毎年のことながら大晦日を迎えると、テレビから除夜の鐘が響いてくる。「19××年よ、平成××年よ、さようなら」とアナウンサーの声が哀愁を帯びて津々浦々(つつうらうら)に流れると、人々は来(こ)し方一年を回想し、来る年のことに思いを馳(は)せて深い感慨にふけるであろう。
もう10数年前になろうか、正宗寺院でも屈指の名刹(めいさつ)、讃岐(さぬき)本門寺の除夜の鐘がブラウン管を通して報道されたことがあったが、この除夜の鐘は『四分行事鈔(しぶんぎょうじしょう)』という本によると、「天竺(てんじく=インド)における鳴鐘の数は百二十なり」とあることから、有名な祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声は百八回鳴らしたものではないらしい。

ところで何故百八の除夜の鐘をつくようになったかというと、百八の梵音声(ぼんおんじょう)をもって、人間の心の光りをさえぎり迷わしている百八の煩悩(ぼんのう)を払い、一切衆生にあたたかい仏心を呼び起こそうというのである。
では百八の煩悩とは一体何かというと、楞伽経(りょうがきょう)によれば、眼(げん)・耳(に)・鼻(び)・舌(ぜつ)・身(しん)・意(い)の「六根(ろっこん)」が、色(しき)・声(しょう)・香(こう)・味(み)・触(そく)・法(ほう)の「六塵(ろくじん=六境)」と触れ合う時、六根がおのおの、好(こう)・悪(お)・平(へい=ニュートラル)の煩悩を生ずる。つまり、眼は色を見るわけであるが、好きな色、嫌いな色、どちらでもよい色の三つの見方があるわけで、そのおのおのを一つの煩悩と数えるから十八になる。
また、六塵のほうでもおのおの、苦(く)・楽(らく)・捨(しゃ)の「三受(さんじゅ)」があって、同じく十八煩悩をおこし、六根の分と合わせると三十六煩悩となる。またこの三十六煩悩は過去において、現在において、未来において夫々(それぞれ)数えられるものであるから、三十六の三倍、すなわち百八となるわけである。

また一説には、彌蘭陀王問経(みらんだおうもんぎょう)では、人間の身体の各部分を三十六に分けて、そのおのおのに過去・現在・未来の三世の煩悩が生ずるので百八煩悩としている。この場合の分け方は大変興味深いものがあって、髪の毛・爪・眼・耳・舌・心臓・肝臓・大腸・小腸など細かく分けているのである。
それにしても、五濁(ごじょく)悪世の生死の苦海に浮きつ沈みつしている煩悩囚縛(ぼんのうしゅうばく)の私ども凡夫は、早く無明(むみょう)の闇から抜けて、新年の朝(あした)を迎えるべく、極悪謗法(ほうぼう)の闇を照らす末法弘通(まっぽうぐづう)の慧日(えにち)に浴しなくて、何の人生ぞやである。

当体義抄に云く、
「正直に方便を捨て但(ただ)法華経を信じ、南無妙法蓮華経と唱ふる人は、煩悩・業・苦の三道、法身(ほっしん)・般若(はんにゃ)・解脱(げだつ)の三徳と転じて、三観(さんがん)・三諦(さんたい)即一心に顕はれ、其(そ)の人の所住の処(ところ)は常寂光土(じょうじゃっこうど)なり。」(御書694頁)


大乗山 持経寺住職  丸岡雄道・著『麻畝の性 巻頭言  第一聚』より(禁無断複製転載)
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